オレは黙って玄関の扉を開けた。


背を丸め、家に入ろうとしていた小谷が、突然、後ろを振り返る。


「どした?怖気づいた?」

「ううん。そうじゃなくて、人の気配がして」

「気のせいだろ。入んの?入んないの?」

小谷はうつむくと、黙ってオレに体を預けてきた。

小谷の微かに震える肩を抱きながら、ふと長い髪に触れた。