ベンチを去ろうとした時、隣りに座っていた女が、駆け寄ってきた。

「ねぇ!あんた、すんごいカッコいいよね。良かったら今度遊んでよ」

女はそう言うなり、ボールペンでオレの杖のカバーにケータイの番号を書き始めた。

「今日は、これからカレシとデートだから遊べないけど、来週だったらオッケーだよ」

どうでもいい人生に、どうでもいい女……その頃のオレにはお誂え向きだった。