まさか、これは夢だ。


だって、藤枝君が私のことを好きだなんて、そんなことありえないよ。


私は浴衣についた砂を払いながら、彼の声が聞こえなかったフリをしてヨロヨロと立ち上がる。


「車、遅いね」

「……好きだ」


藤枝君はガードレールに腰掛けたまま私の手首を掴み、私を見上げるようにもう一度言う。


「うん、私も藤枝君のこと好きだよ」


私は冗談にしてしまいたくて、努めて明るく答えたけど、藤枝君は頭を横に振る。