じんわりと滲む涙を慌てて拭いていると、突然、控え室に流れているクラシック音楽が切り替わり、私は飛び起きる。

「美しく青きドナウ……」

トオル君と葉山の別荘で踊った曲だ……。

堪らず涙が溢れ出る。


「トオル君……」

声を押し殺して泣いていると、目の前にすっと白いハンカチが差し出される。