マンションに帰って私がその手形を見る度にクスクス笑うと、カズトはむっとする。

「ひどいよな。笑ってるし……」

文句を言いつつも、カズトの目は以前のように穏やかで私をほっとさせた。

私がタオルを冷して彼に渡そうと水道の蛇口を捻った時、電話が鳴る。

「あ、おれが出るよ。もしもし……」

だけど、電話に出たカズトの顔と声が一瞬、冷たくなる。