「しかし、良かったですよ」

帰りのヘリコプターの中で、ハインツがほぉ~~~っと胸を撫で下ろす様子に、僕は首を傾げる。

「何が?」

「いえ、ケッチャム家のトーマスと言えば、有名な男色家で、それが原因で放校になったと聞いていましたから……。

これで、トールが『妖しの道』にデビューされたらどうしようかと昨晩は不安でしたよ。

でも、あなたのご無事なお姿に安堵致しました」

言っているそばから、彼の目が急に点になり、顔が真っ赤になったかと思うと、突然、咳払いを始める。