「日向さん、どうしちゃったんですか?!?」

日向をマンションへと送る
車で秘書は声を荒らげた。

「あ?」

不機嫌そうな日向に目もくれず
秘書の口は止まらない。

「だってだって日向さんが女誘ってるのなんて始めて見ました!しかも今日会ったばかりのあんな普通ーの女の子を!」


大きなお世話だ、と日向は答えるが
秘書の厄介も当たり前だろう。

確かに日向の周りには
女がいないわけではない。

ただ、どんないい女でも
日向が自分から誘ったり
本気になったりする所を
秘書は見たことが無いのだ。

「普通じゃねぇよ、あいつは。」

そう言う日向の目は寵愛する
姫を見るように優しく
焦がれるように細まった。

「確かに普通じゃない!はは。
あの絵とか、ライオンだったのかーー!恐竜が脱糞してるのかと思ってましたよ!ははは!」


凛々に断られたことは
まぁ、予想の範疇であったが
その絵のことだけは日向は
不可解であった。


あの絵を見て凛々を
この企画に参加させてくれ
と言ったのは日向なのに
あの、階段の一幕で
そんなことは一言も
言わなかった。

普通、あの絵を相手方の
社長が気に入ってーーと
賞賛の言葉を送るだろう。

ところが篠宮は自分が
気に入って選出したような
口ぶりだった。


それがどうも日向には
引っかかるのだ。


だが、その答えは篠宮自信にも
まだ分からない。