全員が着席し終わると
人数はたった6人しかいなかった。


社長2人と凛々を含めそれぞれの秘書と
企画部長という広々した会議室が
可哀想なくらいだ。

企画部長においては2人の気迫に
慄いて小さくなっていた。

「倉嶋凛々さん。君は日向社長からしたら馴染みがないでしょうから自己紹介をお願いします。」


まぁ、そうであろう。

「はい、ご紹介に預かりました倉嶋凛々と申します。よろしくお願いします。」


「ふっ。」

例のナルシスト社長は嫌な
笑みを浮かべ凛々を見ていた。

「では始めましょうか。」


とうとう始まってしまった
悪夢のような会議が。


そんな事を考えていた凛々にとっては
良い意味で呆気に取られる結果となった。


フランクに始まったその会議は
挙手性で発言するわけでもなく
てんやわんやで6人が口を開く。

最初は遠慮していた凛々だが
篠宮が話題を振るので
思った事を答えれば
ナル社長が笑みを浮かべて
篠宮は、そうだね、とか
凄い発想だ、とか言うもんだから
凛々にとって楽しいものに
なっていった。


「子どもは飛び出す、とか驚きを与えるものが好きだと思います!」

凛々から出る無鉄砲だが
素直な案は彼らの秘書でさえも
暖かい気持ちにならざるおえない。


「くく‥じゃあまた、あの、人みたいな恐竜かな?」

あまり口を開かなかったナル社長は
凛々の発言に対し、そう言った。

人みたいな恐竜?
もしかして‥‥‥

「すみません、もしかしてイベント企画のライオンくんの事ですか?」

そもそも、そうだとしたら何故
知っているのかも謎だけど

恐竜‥‥‥‥‥??

恐竜‥‥‥‥‥‥????

凛々は羞恥と怒りを
ナルシスト社長に
向けたつもりだった。


「あれってライオンなのかい??倉嶋さん。くっ、ふふふふ、ははは。」


凛々は日向に言ったのに
答えたのは篠宮だ。

いい案を出してくれる、と
さっき凛々に言った口が
憎らしくなる。

こいつまで勘違いしていたのか。


「日向社長も、篠宮社長も酷いです!あれはライオンくんが虫捕りをしている所です!」

まぁ、凛々も絵に自信は無いし
本当に腹が立つ訳ではないが
笑みを浮かべる2人の社長に
なんだか親近感を覚えてしまって
つい怒ったふりをしたのだ。

「ふふ。あれ、恐竜みたいな人がゴミ拾いをしているわけじゃなかったんだね。ごめんごめん、でも子どもの事をよく考えられた素敵な案だったんだよ。そんなに怒らないでくれ。」

篠宮は笑いながらフォローをしたが
素敵な案、に気を良くした凛々は
もう、と声をあげるだけだった。


また口を閉ざしたナルシスト社長
だがなんとはなしにふと見ると
優しい顔をしていて。

口が動いたのだ。

声には出さないしきっと
凛々しか気付いてない。

日向も凛々が見ているなんて
気付いてないだろう。









ナルシスト社長の口は
そう、動いた気がした。

いやいやいやいや、おかしいか。

だって凛々以外は全員男。






とかだったに違いない。
篠宮の笑みは確かに優しかったし
そうに決まってる、と凛々は
心を落ち着かせた。