「おはようございます。」


まるで、割って入ってくる様だった。

これまた美しい男が低い声で
私達にそう言った。

背は篠宮より高く筋肉質なのが
服の上からでもよく分かる。

優しそうな顔の篠宮に対し
キツい顔が野獣の様に思わせた。

「おはようございます。日向社長。」


篠宮の口がそう動いたので
そうか、この人は日向理人。

凛々でも名前くらいは
聞いたことがあった。

有名おもちゃメーカーの若社長である。

聞いてはいたが篠宮に劣らず美形で
切れ長の瞳の奥には自分への
絶対的な自信が現れていた。


ああ、こいつ凄い嫌いなタイプだ。

篠宮に感じていたイメージの人間を
そのまま作り上げたような
風貌で凛々は企画への溜息を
再度放ったのであった。


「この度はよろしくお願い致します。篠宮社長に倉嶋さん。」

凛々にとって名前を呼ばれて
驚いたのは本日2回目だ。

こんな見るからにオレサマ社長が
企画のオマケのオマケのオマケである
凛々の名前を知っていたことは
とても以外であった。

それだけこの企画はあちらに
とっても大きな物なのだろう。


「こちらこそよろしくお願い致します。」
「よろしくお願いします。」

凛々は、彼の突き刺さる様な
視線に身じろいだ。


なんだか怖い人‥‥。

凛々が先ほどまで憂鬱に
感じていた企画の話し合いは
予想と少し反していた。