午後の講義が終わった頃
明夫くんがまた大学へやって来て
私と千里はまた例のカフェへ移動した。


千里はヒサシくんとの約束をキャンセルしてまで来てくれた。


千里は女の子だし、危険だから
ヒサシ君の所に行った方が安全なのに



「大事な親友放って彼氏とラブラブなんかできるわけないでしょ!!」



と言って来てくれた。


ごめんね。
千里………


でもね、本当大好き。



明夫くんはというと、さっき散々女の子たちに囲まれたので
帽子にサングラスと変装してきた。
ただし、良い男という所はあまり隠し切れていないけどね。
ただ、顔を完全に隠してるので女の子は遠目で見る程度で近寄っては来なかった



そして、健夫も気配を消す事を習得したのか珍しく1人で現れた。


いつも心の中では散々言いたい事を言える私だけど、今回はダメ。


あの笠原という男の事を思い出すだけで私は一時
息をすることを忘れるくらい追い込まれていた。


私は目の前に対峙した場合は持ち前の負けず嫌いが発動して突き返す事ができるけど、見えない相手に対しての恐怖には
自分でも情けなく思えるくらい弱かった


そしてあの男が私の前に現れるようになった頃にはかなり追い込まれてしまっていた。




笠原とは本当になんの面識も無かった。


向こうが私を駅で見かけたのがきっかけらしい。


それから毎日のように私を見るたびに
だんだん私を自分のものにしたくなったそう


それくらいから、たまにつけられているような気がしていたけど、私はそれでも気がつかなかった。


私がハッキリと自覚したのは、
私の家のゴミが荒らされて
ポストに手紙が投げ込まれるようになってから


それからは常に誰かにつけられてるような気がした。


薄暗い帰り道に、はじめてあの男は私の前に現れた。


ニヤニヤ笑いながら私の手を掴み路地に連れて行かれそうになった時に
たまたま通りがかった修二くんが助けてくれた。


そして、私がストーカーにあってる事がパパやママ、綾ちゃんや明夫くん、近所の人にも知れる事になった。
舞さんも知ってたけど、小さいりっくんを抱えているとはいえ、綺麗で人目を惹きつける舞さんは危ないからここに来ない方がいいということになった。
でも、たまに明夫くんの家に避難する事もあって。


そんな時は震えて小さくなる私をギュッと抱きしめてくれた。


千里といた時も、追いかけ回された事があった。千里は私よりも小さい身体で守ってくれた。


地域の人たちは当番で見回りしてくれた


パパとママ、綾ちゃんも修二くんもみんなみんな私を守ってくれた。


明夫くんなんか、仕事の合間を縫っては私の様子を見に来てくれて、優しい言葉で私を包んでくれた。


その時ばかりは、健夫に虐められてた幼少時代が懐かしく思えるほどだった。