「よ、良かった……。もうちょっとで、流されちまうとこでした」

 ぜぃぜぃと荒い息を吐きながら、捨吉は傍に抱え上げた叺に近づいた。

「お前、水の中に潜んでいたのか」

 真砂の問いに、捨吉は頷いた。

「あいつらの後をつけているうちに、川に捨てる気なのに気付いて。先回りして、ちょっと下流で待ってました」

「でかしたぞ」

 真砂に褒められ、一瞬ぽかんとした捨吉だったが、すぐに、ぱぁっと顔を輝かせた。
 が、そんな嬉しそうな表情は、真砂と叺を覗き込んだ途端に掻き消える。

「ち、千代姐さん!」

 叺の中には、ぐったりとした千代がいた。
 水に洗われ、着ている単に血の汚れは見えないが、乱れた単から覗く肩の辺りに、斬り痕が見えた。

 とりあえず叺から出そうと、千代を抱き寄せた真砂は、ふと気付いて千代の単を少しくつろげた。
 胸元に、何か入っている。

「う……」

 少し乱暴に動かされ、千代が呻いた。
 続いて、げほげほと噎せる。

「千代。大丈夫か」

 真砂の声に、千代はようやく目を開けた。