ははは、と笑いながら去っていく男たちを見送り、真砂は土手を降りた。
 叺は、もう見えない。

---千代……!---

 真砂は川の下流に向かいながら、水面に目を走らせた。
 血が出ていた、ということは、すでに屋敷で斬られていたということだ。
 男たちは、死体を捨てに来たのだろう。

 が、千代がそうそう簡単に殺されるとも思えないのだ。
 何か、策を練ったはず。
 千代が死ぬことで、真砂や党の者に利になることなどないからだ。

 しかし、手傷は負ったようだった。
 その前から、かなり弱っていた。
 川に捨てられる前に、すでに死んでいるかもしれない。

 気付くと、結構下流まで来たようだ。
 そこで真砂は、川の中に叺を抱えて、必死で縄を掴んでいる捨吉を見つけた。

「捨吉!」

 もう周りには人家はない。
 真砂は叫ぶと、捨吉が投げたのであろう鉤縄に走り寄り、縄を掴んだ。

 片手なので、手繰り寄せることは出来ない。
 縄を掴むと、真砂は渾身の力を込めて、反対側に歩き出す。
 捨吉も懸命に足を踏ん張り、ようやく岸に上がった。