真砂は少し足を速めた。
 程なく前方に、屋敷から出てきた二人連れの姿を見つける。

 男たちは、また辺りを見回した。
 真砂は傍の木の陰に隠れる。
 辺りに誰もいないのを確かめ、男たちは道を外れ、土手を降りていく。

 真砂は木の後ろから様子を窺い、はっとした。
 土手の下には、小さな川が流れている。
 川幅は二間ほどだが、水量は多い。

---川に捨てる気か---

 真砂は辺りを探した。
 捨吉の姿がない。

 そうこうしているうちに、ざばん、という水音がし、男たちが戻ってきた。
 真砂の潜む木の前を通って歩いていく。

「やれやれ。ご家老の酔狂にも困ったものだ」

「全く。尻拭いさせられる身にもなって頂きたいものだな。それにしても、勿体ないよなぁ」

「ああ、いい女だったのにな。あっちのほうも、凄かったぜ」

「そうだな。あんないい身体、初めてだったぜ」