夜がとっぷりと更け、屋敷が闇に包まれた頃、真砂と捨吉は、屋敷の北の端に立った。
 ざり、と足を擦って、僅かな音を立てる。
 すぐに中から、小石が飛び出してきた。

 日が落ちてすぐに、屋敷に潜り込んだ羽月からの合図だ。
 まずは身が軽くすばしっこい羽月が、屋敷の内部を探りに入ったのだ。

 まだ屋敷内も人が多いし、あくまで内部の探索のためだ。
 そして夜が更けてから、この北の端で連絡を取る、となっていたのだ。

 真砂は小石に包まれた紙を、ざっと見た。
 簡単に屋敷の見取り図が書いてある。

 と言っても、そうちょろちょろは出来なかっただろうし、縁の下からでは限界がある。
 受け取ったほうも、悠長に見ている時間はないのだ。

 さらっと図面を見、真砂は捨吉にもそれを見せると、もう一度足を擦る。
 すぐに壁が、内側から小さく叩かれた。

 真砂はざっと周りを見ると、地を蹴った。
 音なく築地塀の上に乗ると、すぐに内側に降りる。
 捨吉も、後から降りてきた。

 中で辺りを警戒しつつ待っていた羽月は、二人が入ってくると、すぐに縁の下に潜り込む。
 その後に続き、真砂と捨吉も縁の下に入った。