「ま、お前も乱破の端くれだ。千代も言ってたように、乱破の男と普通の男は違うようだし、だとしたら、いくらあきが落ちやすくても、お前を相手にするときよりはマシなんじゃないか?」

「そ、そうかも……しれませんが」

 いつかのように、ぱたぱたと手で頬を煽ぐ捨吉を見、真砂は怪訝な表情になった。

「お前、何かやたらとあきを気にするな」

 いきなり言われ、今度こそ捨吉は、顔から火が出るほど真っ赤になった。
 幸い目の前には火が燃えている。
 多少赤くなったところで、そう目立たないだろうが……。

「捨吉兄ちゃん、あきさんが好きなの!」

 何の気遣いもなく、羽月が声を上げた。
 ちなみに捨吉は、若年者の指導に当たっているとはいえ、その人当たりの良さから『捨吉兄ちゃん』と呼ばれている。

「ば、馬鹿、羽月っ……」

 慌てるが、本来捨吉は素直な性格なため、事実を言われれば否定は出来ない。
 意味なく羽月の膝頭を、ばしばし叩いた。

「なぁんだ、そうなんだ。おいらはてっきり、うっかりあのガキを気に入ってるのかと思ってたよ」

 焦る捨吉を意にも介さず、羽月は笑いながら言った。
 ん? と捨吉が目を上げる。

「ほら、しつこく頭領を狙ってたガキだよ。子供のくせに、身の程知らずにも頭領の傍に、いっつもくっついてたじゃん」

「ああ……。深成か。ちっちゃい女の子だろ?」

 捨吉の視界の端で、僅かに真砂が反応した。