まだまだ夜明けには程遠い真夜中、真砂は捨吉と羽月を連れて、城下の町を目指した。
 夜が明ける頃に町の手前に辿り着き、一旦休憩する。

「重臣の屋敷なら、もっとお城寄りでしょ? 町に入ってしまったほうがいいのでは?」

 街道からも外れた山の中で火を熾しながら、羽月が言う。

「普通の旅人は、夜に山越えなんぞせん。この時刻に町に入っても、宿も取れんしな。日が昇ってから、街道に降りて町に入る」

「そっか。てことは、日中は探索ってことですね」

 真砂の説明に納得しながら、羽月は初めに千代から届いた文を見た。
 入ってすぐに書いたため、まだ内部の詳しい情報はないが、門の位置などがざっと書かれている。

「詳しい外観は、これから調べるが。それを見たところ、お前ならどこから入ろうと思う?」

 真砂に問われ、羽月は真剣に図面を見る。

「そうですねぇ。これだけでは、よくわかりませんが……。でも、まずはこの辺りに目をつけます」

「ふむ。何故だ?」

「大体のお屋敷って、造りは似たようなものだと。だとしたら、ここから入れば近くまで建物が来てるはずです。そうすれば、入ってすぐに、縁の下などに入り込めます」

「だが建物が近いということは、人も近くにいるかもしれん、ということだぜ」

 真砂の指摘に、うむむ、と羽月が唸る。
 真砂は羽月から文を取ると、それを目の前の火にくべた。