「……あき?」

 俯いてしまったあきに、捨吉が困ったように声をかける。
 あきは、ぎゅっと膝の上で拳を握りしめた。

「捨吉さん」

 思いつめたような目で、あきは捨吉を見た。
 思わず捨吉の表情も引き締まる。

「今夜は、あたしに女技を仕込んで」

「え……」

「この前みたいな、何となく流れでそうなった感じじゃなくて、ちゃんと初めから教えて欲しいの」

「そ、そんなの、俺だってそんなに知らないよ……」

 たじたじとなる捨吉に、あきは、ずい、と身体を寄せた。
 自ら帯を解き、捨吉の手を己の胸元に導く。

「千代姐さんを知ってるんでしょ? だったら女技がどういうものか、わかるはずよ。女がどうしてるのかまでは知らなくても、そうね、どこをどうしたら、男の人は悦ぶものなの?」

「……そうだなぁ……」

 しばし視線を彷徨わせていた捨吉だが、あきの必死さに押されたのか、やがてあきの身体を横たえた。

「俺なんかは、まだまだひよっこだから、多分基本的なことしか教えてやれないよ。ほんとの女技だったら、それこそ頭領とか清五郎様に教えて貰うほうがいい」

「頭領、わざわざ教えてくれないわ。それは女技に限らず、全てにおいてそうじゃない。行為の中で自分でモノにしないと駄目だけど、頭領が相手だったら、そんな余裕ないし。清五郎様は頼めば教えてくださるけど、やっぱりあれぐらいの大人の人って上手いもの。すぐに意識が飛んじゃう。勉強にならないのよ」