「あんた、初めが真砂様だったんだってねぇ。私からしたら、羨ましい限りだよ」

 そろそろと、あきは千代を窺った。
 千代が初物狩りの対象になったとき、あきはまだ六つほどだった。
 が、当時のことは覚えている。

 日が暮れるにつれて、千代がそわそわと真砂を探していたこと。
 初物狩りの相手は、約束出来るものではない。
 大体初潮を迎えてすぐの幼子に、そこまで心に想う男がいること自体が稀なのだ。

 それに、初めての相手は、慣れた者のほうがいいのだ。
 それは廓でも当たり前のこととして行われている。

 初めての水揚げは、それなりに大人で、経験豊富な男がやるべきなのだ。
 だが千代は、どうしても真砂が良かったらしい。

「でも、今でこそ頭領は大人で慣れてらっしゃいますけど、当時は頭領だって子供でしょう?」

「若かったけど、子供ではなかったよ。あのとき真砂様は、十五ぐらいか。あたしゃどうしても、真砂様に抱いて欲しかった。私だって初めは怖かったのさ。だからこそ、大好きな真砂様が来てくれることを、一心に祈ってた。あの祠の前でね」

 だが現れたのは、違う男だった。
 初物狩りの主導権は男にある。
 誰が現れても、拒否することは許されないのだ。