それから五日後の夜。
 母屋で真砂と深成の祝言が執り行われた。

 里の者全員が、母屋と母屋の前の広場で酒盛りをする。
 中には感極まって泣き出す者もいるほど、皆嬉しそうだ。

 宴は夜通し続くようだが、頃合いを見て、あきが深成に耳打ちした。
 あきに連れられて母屋を出、回廊を進む。
 しばらく歩いたところで、あきが振り向いた。

「ここを真っ直ぐ行けば、頭領の局よ。突き当りだから、すぐわかるわ」

 そう言って、頭を下げる。
 深成は言われた通り、一人で回廊を進んでいった。

 真砂の局に入ると、奥の御簾の向こうに、細く灯りが点っている。
 そろそろと御簾の中に入り、敷かれている褥の横に腰を下ろした。
 少し緊張するが、やっと二人だけで真砂に会えると思うと、嬉しさのほうが勝る。

 一時すると、僅かに空気が揺れ、真砂が局に入ってきた。
 真っ直ぐ奥に進み、御簾を上げる。

 深成は頭を下げようと床に手を付いたが、真砂は褥に胡坐をかくなり、深成の手を取って引き寄せた。

「あっ」

 強く引かれ、深成は、どん、と真砂の胸に飛び込む。
 そのまま、真砂はぎゅっと深成を抱き締めた。

「寂しかったか?」

 ややあってからかけられた声に、深成はこくりと頷いた。
 その反応の速さに、少し身体を離して真砂が笑う。

「この五日間だけじゃないよ。三年間、ずっとわらわ、真砂に会いたかったんだから」

 言うなり深成の目から、ぼろぼろと涙があふれる。
 押し殺してきた分、解放されると抑えが効かないようだ。

 真砂はそんな深成をもう一度抱き締めると、そのまま褥に転がった。

「これからは、ずっと一緒にいてやるさ」

 そう言って、真砂は深成の単の帯を解いた。




*****終わり*****