「それはねぇ、深成ちゃんだからよ」

 いきなりあきが、ぐぐっと深成に顔を寄せて笑った。
 まるで深成の心を読んだようだ。

「深成ちゃんが、頭領のことを優しいと思うのは、頭領は深成ちゃんにだけは優しいからよ。でもま、確かにあの一件以来、頭領は変わったわ。皆のこと、ちゃんと考えてくださるようになった。人間らしくなったっていうのかしら」

 ふふ、と笑って、あきは布団を被る。
 深成も、そろそろ眠くなってきた。

「頭領が今姿を見せないのはね、祝言までは、手を出せないからなのよ」

「えっ? しゅ、祝言?」

 ぱち、と深成の目が開く。

「里ではね、祝言が正式に決まると、お互い情事は慎むの。潔斎期間っていうのかしらね。その間に、衣装を整えたりするの。今は里の女たちが、深成ちゃんの花嫁衣装を整えてるわ。といっても、深成ちゃんの着てきた衣装が、そのまま花嫁衣装になるって頭領は仰ってたけど。でも下の単とかね。頭領の単とか」

「そ、そうなんだ。真砂、祝言とか、そんなこと一言も……」

「頭領、帰ってくるなり五日後に祝言を挙げるって。まぁ、元々今回は頭領の花嫁を迎えに行ったんだから、こっちもそれなりの用意はしてたけどね。いきなりだったんで、皆びっくりしてたわ」

 あきが楽しそうに言う。
 深成はやはり何だか恥ずかしく、ずるずると布団に潜り込んだ。