「そんなことない!」

 ずい、とあきが身を乗り出す。
 何気に失礼な突っ込みなのだが、あきは拳を振って力説した。

「頭領は乱破の中の乱破なの。それは昔から皆認めてるわ。乱破っていうのはね、非情じゃないと務まらないこともあるのよ。無慈悲に仲間を切り捨てないとこなせない任務もあるしね。凄く難しいことだし、そうそう出来ることじゃないわ。でも頭領は、それを完璧にこなしてた。仲間を助けるなんてこと、全く頭になかったわ」

「それって良くないことじゃ……」

「良い悪いじゃないの! そうでないと駄目なの。一流の乱破であればあるほど、情はなくなっていくものなの。だからそうそう、一流の乱破なんていないのよ」

 拳を掲げて力説するあきの言うことは、ずっと前に、長老にも聞いた。
 真砂がいかに非情に振る舞うか。
 それは乱破のあるべき姿だと。

「でも、やっぱりわらわは、真砂はそんな情なしじゃないと思うな……」

 確かに出会った初めの頃は、信じられないほどの非情さだと思った。
 が、徐々にそうは思わなくなった。

 最後の、それこそ真砂が腕を失った直後は、深成が動けなくなっても真砂は見捨てない、という自信があった。
 それは何故なのか。