呆然としていると、長老が、ぽん、と深成の肩を叩いた。

「やれやれ。いきなり一人にされたら深成も寂しいじゃろうに。ま、今後のことで忙しいから仕方ないが。長く皆の注目を集めておくのも照れ臭かったのじゃろ」

 ふふ、と笑いながら言い、長老は少し後ろに控えていた女子を呼んだ。

「あき。深成を湯殿に連れて行っておあげ。お前さんも一緒に入ってくるがいい」

「はぁい」

 にこ、と笑って進み出た女子に、深成は、あ、と声を上げた。
 見覚えがある。
 あきは深成の反応に、またにこりと笑った。

「あの。確か真砂の家でお会いしましたよね」

「あ、ええ。あたしはあき。よろしくね」

「み、深成と申します」

 ぺこりと頭を下げる。
 そして深成はあきの案内で、湯殿に向かった。

 湯から上がって母屋に入り、夕餉を食べても真砂の姿はない。
 深成は不安そうに、きょろきょろと辺りを見回した。

「さて。じゃあ長老、おやすみなさい。深成ちゃんは、こっちで一緒でいいんですよね」

 母屋の奥に長老のための布団を敷き、挨拶をしてから、あきが深成を手招いた。
 長老が頷き、ぽんと深成の背を叩く。

「ああ。さ、疲れたじゃろ。ゆっくり休むがよい」

「あ、あの。真砂は……?」

 ここに来てから、すぐに一人にされてしまった。
 あきが面倒を見てくれているとはいえ心細く、深成は堪りかねたように、長老に聞いた。