懐剣に巻き付いた鎖を解き、手元に残った鎌を落とすと、真砂は息をついて離れを見た。
 さっきは何の気も感じられなかったのに、今は静かな殺気が満ちている。
 そして、回廊の影から、滲み出るように見覚えのある男が現れた。

 海野 六郎(うんの ろくろう)。
 以前深成を迎えに来た男だ。

 それを合図に、ばらばらっと槍を構えた兵士たちが、庭に散開した。

---ここに、深成がいる……!---

 真砂は確信した。
 六郎は回廊を背にして立っている。
 奴の後ろ、障子を隔てた向こうの部屋に、深成がいるのだ。

 兵が一斉に槍を構える。
 真砂も懐剣を抜いた。

 そのとき。
 細く、障子が開いた。
 誰かが、中から外を見る。

 月明かりに照らされて、真砂には顔を覗かせた人物の顔がはっきり見えた。
 まだ幼い面影は残るが、随分大人っぽくなった深成である。

 三年前は、よく日に焼けて健康そうだったが、今は月明かりに溶けそうなほど、透けるように白い。
 痩せたこともあるのだろう。