「くっ」

 思わぬ攻撃に、鎌之介が向かいの築地塀の上で体勢を崩す。
 その隙を逃さず、真砂は一気に鎌之介との距離を詰めた。
 築地塀を飛び、鎌之介に突っ込んでいく。

 が、鎌之介も単なる忍びではない。
 すぐに体勢を立て直し、突っ込んでくる真砂に向かって、鎌を放つ。

 狭い築地塀の上では、そうそう逃げ場はない。
 鎌は一直線に真砂に迫る。

 鎌が真砂の顔面に突き立つ、と見えたとき、いきなりくるくるっと鎌が回転した。

「なっ?」

 鎌之介の目が見開かれる。
 そしてその見開かれた目には、右手に握った懐剣を顔の左側に振りかぶった真砂が、間近に迫っている姿が映った。

 腰の懐剣を鞘ごと引き抜き、それに跳ね上げた鎖を巻き付けたのだ。
 そして鎌を止め、その勢いのまま突っ込んできた。

「ぐっ!!」

 真砂が振りかぶった懐剣の柄を、鎌之介のこめかみに打ち込んだ。
 鎌の重さと、真砂の体重を、そのまま打ち込まれたようなものだ。
 鎌之介は小さい呻き声と共に、離れの庭に落ちた。