「それだけではありませぬ」

 真砂の心を見透かしたように、長老が、面白そうに口を挟んだ。

「見てくれだけではありませぬよ。何というのですかな、その者の持つ雰囲気、と申しますか。心和ませる娘っ子でありましたろう? 顔の造りどうこう、よりも、むしろそういった雰囲気をもって、『可愛い』と言いますか」

「俺があいつを、他の女子と同じように思わなかったように、か」

 おお、と長老が身を乗り出した。
 嬉しそうな顔だ。

「自覚がありましたか」

 しまった、と思ったが、初めから他の者とは違う感情があったのは確かだ。
 ただそれは、決して甘やかな感情ではなかった。

「そりゃ、あんな間抜けは里にはいないしな」

「間抜け……」

「凄い殺気を剥き出しにして攻撃してくるかと思えば、すっ転んで泣き喚くし、状況を考えて飛び込んできたと思えば、簡単に俺に潰されるし。あいつの行動は、全てが想定外だ。悪いほうにな」

 そっぽを向いたまま、素っ気なく言う。
 長老は髭をしごきながら、ふむ、と頷いた。