「……ったくお前らは。何をそんなに張り切ってるんだか」

 しばらくしてから、真砂が仏頂面で呟いた。
 相変わらずにこにこと、長老は囲炉裏の灰をかき混ぜた。

「わしも、あの犬っころのような娘が戻ってくるのは嬉しいですよ。かわゆらしい娘っ子でしたしのぅ。はてさて、あれから三年……。どう変わっているやら。もう立派な娘になっておりましょう」

「そうだといいがな……」

 どうも、以前の深成が子供過ぎたせいか、娘になっている、と言われても想像出来ない。

---可愛い……か……---

 捨吉も長老も、深成は可愛かったと言う。
 だが真砂には、『可愛い』というのがどういうことかがわからない。

「皆あいつを可愛いと言うな。ああいうのを、可愛い、と言うのか?」

 何気なく問うてみたことに、長老は、おや、というように顔を上げた。

「そうですなぁ。可愛いと思うかどうかは、人それぞれですが。ま、頭領が手中にしたいとお思いになるぐらいです。不細工ではないでしょうな」

 かかかか、と笑う。
 またちょっと自分の心に触れられたようだが、なるほど、そう言われればわかりよい。

 人のことなど特に何とも思わない真砂でも、醜いか美しいかぐらいはわかる。
 そこまで両極端でなくても、不細工か可愛いか、と問われれば、確かにあの小さな娘は、『可愛い』ほうに入るのだろう。