真砂は口を引き結んで、捨吉を見た。
 別れた後で深成が泣いた、とは聞いていたが、ここまで具体的な話は聞いていなかった。
 真砂の気持ちもわからないまま、する話でもなかったからだろう。

「あの娘っ子が、そこまで考えて真砂の元を去ったのか。でも、片倉家との婚儀は受け入れたわけだな。ま、そもそも大名の姫君だ。普通に考えりゃ、俺たちのような乱破なんぞ、見向きもせんわな」

 清五郎は言いながら、文をじっと見た。
 そういえば、この情報をもたらしたのは誰なのか。

 矢次郎は指令以外でも、各大名などの動きを定期的に送ってくる。
 それによって、真砂たちも世の情勢を知るのだ。
 矢次郎が今どこにいるのかも、それで知る。

「とりあえず、この情報の出処を探るか。何か、ただの世間話のようだし、別にわざわざ矢次郎が送ってくるほどのものでもないような気もするよな」

 だが矢次郎が送ってくる以上、何かが引っかかったのだ。
 矢次郎は情報の分別能力も秀でている。
 必要のないものなど、送ってくるはずがない。