「約半月後だな。準備期間は十分だ」

 言いつつ、清五郎は捨吉に指示を与えようとする。
 が、それを真砂は、渋い顔で遮った。

「半月も待ってられるか」

 言うなり立ち上がる。
 慌てて捨吉が、真砂を押し止めた。

 ふと、真砂は中腰で自分の前にいる捨吉を見た。

「……何だよ、その顔は」

 真砂に言われ、捨吉はちょっと首を傾げる。
 嬉しそうだ。
 思えば文を持ってきたときから、何か嬉しそうだった。

「だって、やっぱり頭領は深成を迎えに行くんだって思うと、嬉しくて」

「何でお前が嬉しいんだ」

「そりゃ、頭領が想う人を見つけたんですもん! 嬉しいですよ~」

 にぱっと笑う。
 そのあまりに嬉しそうな笑顔に毒気を抜かれ、真砂は身体の力を抜いた。
 ふ、と息をつくと、どさ、と元の位置に座る。

「俺、別れるときに深成に言ったんですよ。深成がずっと頭領を想ってれば、頭領はきっと迎えに行くって」

 いそいそと真砂の前に座りながら、捨吉が言う。
 その通りになったことが嬉しいのだろう。

「深成はさ、頭領が自分のことを頼ってくれるのが、凄く嬉しかったんですって。怪我したとき、深成がお世話したじゃないですか。ああいうのを頭領が嫌がらないのが、すっごく嬉しかったって言ってました。だからこそ、頭領にこれ以上危険が及ばないように、九度山に帰ったんですよ」