「そんなの、見かけが良ければ簡単なんじゃない?」

 例えば真砂など、大奥に放り込んだらそれこそ皆虜になるのではないか。
 が、ゆいは、ふふ、と意味ありげに笑った。

「頭領はそうかもね。でも、乱破の男全員が、そんな見目良いわけないでしょ。そういう男は、そっちのほうを磨くのよ。顔が悪くても、閨が凄かったら、女はころっと参るらしいわ。まして大奥なんて、男日照りな女の集まりよ。顔なんて関係ないのよ」

「そ、そういうもんなの……」

 あきは俯いて、握った芋に目を落とした。
 ちょっとした衝撃だったが、よく考えれば普通のことかもしれない。

 自分たちが女技を磨くのも、男を虜にするためだ。
 あきもゆいも、さほど目を惹く外見でもない。
 千代のような華やかさはないのだ。

 それでも乱破の女子は任務に赴けば、狙った男をモノにする。
 それは房術が上手いからだ。

「ま、男がそれを使うことは、そうないけどね。大奥なんて大きなところを相手に仕事するなんてこと、この小さな党にはないし」

 聞いたことがあるだけよ、と笑うゆいに、あきも曖昧に笑い返した。

「ところであき。頭領の、あの腕」

 不意にゆいが、話題を変えた。

「例のさ、刺客にやられたんだって?」

「え?」

 きょとん、とあきが、ゆいを見る。
 ゆいは、ぐっと声を潜めて、あきに顔を寄せた。