が、この恐ろしい頭領を夕餉に誘うなどということは、お礼を言うだけで失神しそうなこの女子には難しかろうと、清五郎は助け舟を出したわけだが。
 残念ながら、清五郎だって女子にとっては似たようなものだ。
 覗き込まれ、言葉も出ない。

「何度も言うが、俺は人の作ったものは食わん」

 真砂は女子を一瞥し、あっさり断る。
 女子が慌てたように、初めて顔を上げた。

「し、しかし。そそそ、それでは姑に怒られてしまいます。と、頭領には日頃から、愚妹の面倒も見ていただいておりますし、助けていただいて礼もなしでは……」

「別に千代の面倒など見ていない。千代に限らず、お前も里の女子なら、俺が他人の面倒など見るわけないとわかるだろう」

 渋い顔で言う真砂に、ははっと女子は、また平伏した。

「わかったら、とっとと帰るんだな」

 言い捨てて踵を返す真砂だったが、意外に女子は声をかけた。

「しし、しかし……。愚妹の命を助けて貰って……」

 真砂の足が止まる。
 眉間に深々と皺を刻んで、息をついた。

 この表情を女子が見たら、卒倒したかもしれないが、幸い真砂は背を向けている。
 気持ちを落ち着けるように何度か息をついてから、真砂はちょっとはらはらとこちらを見ている捨吉の腕を掴んだ。

「それなら、こいつを連れていけ。千代の命を救ったのは捨吉だ」

 ぐい、と捨吉を女子の前に追いやり、真砂はとっとと部屋の奥へと戻っていった。