「何が言いたい。礼って何だ」

 低く言うと、また女子の身体がびくんと震えた。
 ぶるぶるぶる、と震え、回廊の床にへばりついている。

「あああああ、あの……。も、申し訳ありませんっ!!」

 ひたすら小さくなって謝る女子に、真砂は渋面になった。
 要領を得ない者は嫌いだ。

 若干苛々してきたところに、清五郎がやってきた。
 回廊にへばりつく女子を見、足早に近寄ってくる。

「お前はほんとに律儀だなぁ。俺の言ったこと、そんなに真に受けなくてもいいのだぞ」

「清五郎? 何のことだ」

 真砂の問いに、清五郎は、ぽん、と女子の肩を叩いて笑う。

「いやね、お千代のところに行ったらさ、母君が夕餉に招待してくれたのさ。そんなら千代を助けた真砂も呼ぼうかって言ったんだがな」

 ざっくりとした説明に、真砂は再び、足元の女子に目を落とした。

「つまりこいつは、夕餉に誘いに来たわけか?」

「そうだろ? 違うのか?」

 横にしゃがみ込んだ清五郎に問われ、女子は、あわわ、と焦っている。
 この硬い頭の女子からすると、多分姑に言われたことは絶対だ。
 軽い提案とはいえ、誘わなければ! と思っているに違いない。