「そそそ、そんなっ!! と、頭領をこのようなところに招くなど! まして頭領に夕餉をご馳走するなど、とんでもございません! そそ、そのような大層な腕などありませんし、そんなそんな、何て恐れ多い……!」

 腰を抜かさんばかりに驚いている兄嫁に、その他三人は冷たい目を向ける。
 清五郎は面白そうに目を細め、少し兄嫁に身体を寄せた。

「命を助けて貰って礼も言わないほうが、とんでもないことだと思うがな」

「っ!!!」

 気を失うかと思うほど真っ青になり、兄嫁は、がばっと平伏すると、そそくさと部屋を出て行った。

「ふふ。何ともからかい甲斐のある女子だ。俺にとっては面白いが、千代には鬱陶しいようだな?」

「清五郎様は、たまにしか相手をしないから面白く思えるんですよ。四六時中あの調子では、ほんに気づまりです」

 ぷん、と言う千代に、セツも頷いて同意する。

「それもそうか。ま、お千代も嫁に行くまでの辛抱だ」

「そのようなもの……」

 ふ、と千代は息をつく。
 誰かと所帯を持つ、ということに、千代はさほど興味がない。

 今までは、所帯を持てば真砂に抱かれなくなるから嫌だ、と思っていたが、ここ最近は真砂に対する気持ちが変わったようだ。

 相変わらず真砂のことは大好きなのだが、前のように、抱いてくれれば何でもいい、という熱い気持ちがない。
 真砂の中に、壁を感じるようになったのだ。