「やれやれ。昔から硬い女子ではあったが、さらに酷くなっているな」

 兄嫁が出て行った途端、胡坐をかいて清五郎は呟いた。

「全く。あの義姉に愚妹と言われると、腹が立ちますわ」

「まぁ、いかにもお前とは合わなさそうだ。気づまりか?」

「そうですね。今はこの奥の部屋を、母と私で使わせて貰ってますから、まだマシですけど。でも部屋に籠っているのも、性に合いませんし」

 褥の上で、千代は足を擦った。
 早く動けるようになって、外に行きたい。

 家にいると兄嫁が何かと世話を焼いて、はっきり言うと鬱陶しいのだ。
 悪い人ではないし、心配してくれているのもありがたいのだが、どうも放っておく、ということが出来ないようで、世話を焼き過ぎるのだ。

「早く良くなるためにも、しばし大人しくしておくことだな。刀傷はその薬ですぐ治るだろうが、身体の中は、そうはいかんからな」

 言いつつ、清五郎は千代の足に布団をかける。
 春めいてきたとはいえ、まだまだ空気は冷たい。
 千代の身体が冷えてきたのに気付いたのだろう。

「炭は足りているか? 弱っているところに風邪でも引いたら、ひとたまりもないぞ」

「大丈夫ですよ。私は布団に潜り込んでおけばいいですから」

「だったら寒いほうが、お前は大人しくしておいて良いかもな」