「す、捨吉さんには、今回の指令にあたって、女技を教えて貰っただけです」

 長老にも、あきの気持ちはバレてしまっただろう。
 でも、捨吉と良い仲になっているわけではない、と改めて気付き、あきは少ししょぼんと項垂れて言った。

「ま、あいつはガキどもの世話役だしな。俺より細かく指導してくれるだろ」

 人の色恋には興味のない真砂が、軽く言う。
 どうやら真砂には、あきが捨吉を慕っている、ということはバレていないようだ。
 気付いたとしても、どうでもいいから突っ込まないだけかもしれないが。

「多分、あれほど酷い扱いをする奴に対して女技を使うことも、そうないと思うが。今後は、出来るだけ女子は使わないようにするさ。お前もしばらくは、大人しくしておけよ。逢引も、控えるんだな」

 またもぅ……と、あきが、がくりと項垂れる。
 が、真砂に心配されたことは嬉しい。
 素直に、はい、と頷いた。

「そうじゃ。大事にせんと、悪くしたら子を産めなくなるぞ。頭領の言う通り、しばし捨吉に誘われても、控えるんじゃな」

「……わかりました」

 返事をしつつ、あきは僅かに、きろりと長老を睨んだ。
 からかわれている。

「しかし、そろそろ祝言なども、多くなりましょうなぁ」

 ふと、長老が庭に視線を投げつつ言った。

「そろそろ屋敷も完成します。同時に頭領、あなた様ぐらいの年齢の者も多くなってきましたしなぁ」

「俺ぐらい?」

「ええ。ちょうど次の世代を産む年齢ですな。頭領も、そろそろ誰ぞ娶ってもよろしいのでは?」

「……馬鹿を言うな」

 ふい、と真砂は顔を背ける。
 そんな真砂を、あきは、じっと見つめた。