「お母さんに言ったの……不倫のこと。気持ち悪い、って」
「ああ……そういうこと」
「ごめんなさい。慎重にやれって言われてたのに」

比呂くんは、私の勝手な行動にも怒らなかった。
それどころか、優しく諭すように私の頭を撫でた。

「仕方ないよ」
「どうしてそんなに優しくするの? 私のことが憎いんでしょう! 復讐が終わったからって、急に変われるの? 私には無理!」

涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げると、比呂くんは悲しげに目を伏せた。

「ごめん。復讐なんて始めるべきじゃなかった。あんなのはただの八つ当たりだった」
「いまさら何言って、……」
「本当に今更だ。後に引けなかったなんてのは言い訳だし、罪悪感を感じながら君を傷つけるのをやめなかったのは俺自身だ」