瞬間、泣きそうになった。
冷やかされたからじゃない。笑われたからじゃない。
比呂くんの笑顔があまりにも優しくて、眩しかったから。

「そうだよ、悪い? 私は親友の彼氏を寝取ったビッチだからね」

自虐的に言って、強がってみせる。そうしなければ、耐えられそうになかった。

「そんなの嘘なのにな」
「麻実に嘘ついたのは、本当だから」
「嘘ついたことない人間なんていないよ」
「別にいいから、もう。それより何しにきたの。学校では他人のふりって約束」

比呂くんがまるで慰めに来てくれたかのように優しくて、私は困惑する。

「コウに聞いたんだ。円がここでぼっち飯してるって」
「瀬戸くん? 仲直りしたんだね」
「あー……うん、まぁ」

比呂くんは、どこか歯切れの悪い返事。

「じゃあ、私達のこと全部話したんだ」
「まさか。そんなことしたら俺絶交されちゃうよ」