「でも、俺は!
俺は柚季を傷つけた!
陽介さんを、渉さんを……っ」



仁葉の手が振り払われる。

そのままぎり、と爪が坂元くん自身のそれに食いこんでいく。



「そう、だね」



仁葉は坂元くんの瞳をただ見つめ返す。



それは、否定できない。

どうしたって事実。



仁葉がそんなことないよって言ったって意味はない。

……だから、言えない。



でも、でもね。



「柚季さんたちね、本当に坂元くんが嫌いになったわけじゃないと思うの」

「なに勝手なこと……」

「わかるんだよ!」



遮るように、大きな声を出した。

荒い呼吸を繰り返す。



坂元くんに嫉妬してしまった陽介さんのことも。

好きだけど怖いと思ってしまった柚季さんのことも。

最後の大会を奪われて、憎みたいのに憎めない渉さんたちのことも。



みんな、わかっちゃったんだよ。