土手で坂元くんに会ったあの日と同じくらいの時間帯。

朝の6時半の土手に、仁葉はひとり立っていた。

何度も出るあくびをかみ殺し、意識を切り替える。



太陽が徐々に仁葉の肌を焼こうとあつくなってきた。

手持ち無沙汰でしゃがみこんで、葉が揺らめくのをじっと見つめる。






……大丈夫。

仁葉の言いたいことは伝わるはず。



ちゃんと言葉にして、届くようにすればきっと、きっと……。



きゅう、と唇を噛み締める。

広がる痛みになんとか落ち着こうとしてみた。






その時、聞こえてきた一定のリズム。

タッ、タッ、と靴が地面と擦れる音。



顔を上げた先に、いつかのように走って来ている……坂元くんの姿。






「坂元くん!」

「すず、みや……」



どうして、と言いたげな表情になんか気づかなかったふり。



「────おはよう!」



そう言って、仁葉はこわばっていた頬を緩めて、笑顔を浮かべた。