「はぁー…」
「どうしたんですか?田中さんが就業中に溜息をつくだなんて、珍しいこともあるんですね」
「美優さん…私だって完璧な人間ではありませんので、溜息の一つや二つくらいつきますよ…」
「それでも、こうやって人前で溜息をつくだなんて、私が知っている限りありませんでしたよ?」
「………」
「社長と何かあったんですか?」
「いえ…。でも、ちょっと心配事が…」
「…会社に関することですか?」
「そうですが…でも理由は言えません」
「そうですか…。私にはどんなことで悩んでいるのかはわかりませんが、私達は社長を信じて歩んで行くだけ。違いますか?」
「…!!…」
「まぁ、これは田中さんの受け売りなんですけどね」
美優はそう言うと、舌をペロッと出して笑っていた。
そんな美優の言葉に、田中は何だか吹っ切れたような表情をしていた。
「そうですね。私達は社長を信じて、歩み続ければ良いんですよね。肝心なことを忘れる所でした。ありがとうございます、美優さん」
「いえ。いつも田中さんには助けていただいているので、田中さんが悩んでいる時は私が助けます。だって、私も社長秘書なんですから」
「ありがとうございます」
「さっ、仕事しましょう」
「そうですね」
美優の言葉で目を覚ました田中は、気持ちを切り替えて仕事に取り組んだのであった。