「そうです。何か理由があるとしか思えません。でなければ、長谷川グループのような急成長を遂げている会社が、うちのような中小企業を買収しようと思うでしょうか?」
「まぁ、確かに田中の言う通りだが、理由がわからない以上、仕方あるまい」
「……直接、長谷川社長に聞くと言うのはどうでしょうか?」
「しかし…」
「ですが、このままではいつか長谷川社長の思うがままになってしまいます」
「……だが、まだ今はその時期ではない。今後の長谷川社長の出方を待とうじゃないか。何、今までだって困難を乗り越えて来たじゃないか。今回だってきっと大丈夫さ」
「………」
田中は徹也の言葉に不安を覚えながらも、社長室を後にした。