そんな美優の様子に、田中は安心させるかのように、そっと頭を撫でた。









「私はお嬢様の味方です。私の目が黒いうちには、お嬢様を悲しませるようなことを社長には一切させません。だから安心してください」

「田中さんは父の味方じゃないんですか?」

「会社としてなら、社長の考えに従います。しかし、事がお嬢様の結婚となると、どうも社長とは意見が合いません。私は決められた結婚ではなく、お嬢様が本当に好きになった人と結婚してほしいと思っています」

「田中さん…」

「だいたい、そんな結婚じゃ幸せになれないと先代に啖呵切ったのを社長はお忘れではないはず。なのに!それが自分の娘となると、予防策を張ってしまうのが、父親なんですかね…」








そう言うと、田中は苦笑いしながら美優のことを見ていた。









「さて、お喋りはこの辺までにして、仕事をしますか。でないと、社長に叱られてしまいます」

「はい」








田中の切り替えの早さに、美優は思わず笑ってしまった。