「わかった。お前がそこまで言うなら、今日の夜、長谷川社長と会った時にしっかりと話を聞く。それで良いんだろう?」

「えぇ。お嬢様を悲しませるような判断を社長がされるようであれば、私は決して社長を許しません」

「あぁ、わかったよ。第一、今までお前が言うことに間違いはなかったんだ。きっと今回だって、長谷川社長にも何か理由があったんだろう」

「そうですね。全ては今夜の会食で明らかになるはずです」

「あぁ。……だが、娘を持つ親として、少しは悪足搔きだってしたいじゃないか」

「まぁ、その点はわからなくもないですが…。けど、そんな一時の感情で反対されるおつもりでしたら、忠告をしておきます。お嬢様に嫌われないように程々にお願いします」

「…………」








田中のその言葉に、徹也は黙り込んでしまった。









「社長?」

「お前は痛いところを突いてくるな…」

「社長は勿論、お嬢様のことを思ってですから」

「………」

「では私はこれで…。長谷川社長に連絡をしてきます」

「あぁ、頼んだ」

「では失礼します」








そう言うと田中は、社長室から出て行った。
田中が出て行くのを見届けると、徹也は大きな溜め息をつき、









「田中……アイツだけは敵に回したくないヤツだな…」








そう呟いていた。