「橘さん…?」
私は不安になってそっと名前を呼んだ。
でも橘さんは動こうとしない。
こんな橘さんは初めてで
私もどうすれば良いのかわからない。
わかることは
広樹さんは橘さんを相当傷つけた。
「ツトム…?俺…広樹。」
――やっぱり。
橘さんの表情はさらに強ばる。
どうしてあげることもできないもどかしさに
私は橘さんの手を握った。
「…莉緒ちゃん…?」
弱々しい声。
ねぇ橘さん。
私気付かなかった。
いつも私のことばっか気にしてくれるから
あなたが誰よりも繊細で
寂しがり屋だったこと……
「橘さん…無理…しないで?」
私は力を振り絞り
橘さんに囁いた。