散歩と行っても屯所の外に出ると、女供に囲まれて煩わしいんだよな。
よし、道場に顔でも出すか。
道場に近付くにつれて男達の野太い声が聞こえ、威勢の良さによしよしと頷いてみる。
最近は取り立てて事件があるわけじゃなかったから、道場くらい騒々しい方がいい。
緊張感を持ってねえと、いつ何時何があるかわからねえからな。
ひょいっと道場を覗き込んでみる。
「でやーっ!!負けてたまるかぃっ!!」
「いえいえ、今回も私の勝ちですよっ!!」
「ぐわぁぉっ!!なんで勝てねえんだよぉぉぉ!!」
………………は?
此処は道場だよな?と、俺は今一度辺りを見て確認してから、また道場内に視線を向ける。
やっぱり道場じゃねえかよ。
なのになんで、総司と藤堂の野郎……面子で遊んでんだよ!!
「あははっ!! 平助ぇお前ほんと弱ぇな!!」
「これで総司が五勝か。おい平助、お前剣以外取り柄ねぇのかよ?」
しかも何回やってんだよ。
こりゃあ一つ説教しなきゃなんねぇみてぇだと、俺はドンっと道場に足を踏み入れた。
すると一斉に此方に向く視線───そして、皆顔が青ざめていく。
「てめぇら、真面目に剣術してんのかと思いきや、なに遊んでやがんだっ!!」
「ひ、土方さんっ!? あれ、今日は休みじゃなかったのかっ?」
焦った風に永倉に聞かれ睨みつけると、ひぇぇっと原田の背に隠れる。