そして、あっという間に夜になり屯所はいつもと違い幕末仕様のクリスマスパーティーが始まろうとしていた。
行灯を廊下に集め庭を照らすと、雪景色と溶け込んだクリスマスツリーが良い雰囲気を出していた。
そして井上が筆頭となり用意してくれたご馳走も、貧乏暮らしの新選組にしては珍しくみんな興奮気味だ。
「では、今回のくりすますとやらを企画してくれた矢央君に一言頼もうか」
ええ?私ですか?と焦る矢央の背中を中央へ押し出す藤堂や、よっ!!と掛け声をかける原田を軽く睨み付けると、庭に降り立った矢央が酒の替わりにお茶の入った杯を掲げる。
「えっと、何を言えばいいのかわからないけど……本当はクリスマスって、まだ一週間程先なんですよね」
「ええ!?そうだったんですか!?」
「総司……」
「で、でも!!こうしてみんなでクリスマスの準備からできて、すごく楽しかったし、冬の一つの行事として、またこうして来年もできたなって思います」
みんなのあたたかい視線に矢央は破顔する。
「えっと、じゃあ……メリークリスマス!!」
よくわからなかったが、きっと矢央に続けば良いのだろうとみんな杯を掲げて「めりぃくりすます!!」と叫ぶ。
それからは、クリスマスというよりは、いつもと変わらない宴会会場とかしていた。
その様子に、結局宴会がしたかっただけじゃないのかと思いながらも、楽しんでいる姿を見て「ま、いっか」とご馳走に舌鼓した。
「ほんと、また来年もできたらいいなあ」
「できますよ。また私もお手伝いします」
「ふふ。沖田さんは、大福を食べたいだけだったりして?」
「あ、バレちゃいましたか?」
「あはは。沖田さんらしいです!」
お腹を抱えて笑う矢央に優しく微笑みかける沖田。
「矢央さん、めりぃくりすます!です」
そう言って、沖田は小さな包みを懐から取り出し矢央に手渡した。
驚きが隠せない矢央に「くりすますとは、贈り物もするんだと仰っていたから」と、ほんのり頬を染めた。
包みをあけてみると、矢央の黄金色の髪に栄える緋色の髪飾り。
「これ、私に?」
「はい。矢央さんも女子なのですから、たまにはお洒落を楽しんでください。それにこれは、くりすますとは関係なく日頃頑張ってくれている矢央さんに、私達からの感謝の気持ちを込めての贈り物です」
「………」
沖田に言われて顔を上げると、みんな優しげに微笑みながら矢央を見ていた。
それぞれ「ありがとう」と口にされ、思ってもみなかった贈り物とみんなの気持ちが嬉しくて頬が緩む。
「ありがとうございます」
こうして少し変わったクリスマスの夜はふけていった。
「で、結局片付けるのは私じゃんかああああっ!!」
翌朝、散らかり放題の屯所中を泣きながら掃除している矢央の姿があったとか─────。
幕末でクリスマスをしよう! 終