僕は不思議なほど落ち着いていた。
もう身体も動かず、痛みさえ麻痺しているのか感じなくなっていて、ただ分かるのは目の前で愛しい彼女が僕のために泣いてくれているということだけ。
僕はいつからか新選組の中で孤立するようになっていった。
本当の家族とは何なのか分からず生きてきた僕にとって、仲間は友でもあり仲間でもあり家族の愛を知らずに生きた僕にとって彼らの存在だけが光だったのに。
いつからか、その光は僕を照らしてくれなくなったんだ。
そしてその光が完全に消えたのは、山南さんが死んでから。
僕が江戸に行っている間の出来事だったけど、僕がいないからこそなんじゃないかって思ってしまった。
山南さんは優しい人だから、僕がいたら悲しむとでも思ったのか。
それとも山南さんのことを慕っていた僕が戻る前に……とでも土方さん達が思ったのか。
本当は分かってる。そのどちらでもないことくらい分かってる。
だけどその頃から、僕は誰を信じらればいいのか本当に分からなくなって、どんどん壊れていった。
大切だから失いたくないんだと気づき、だったら失う前に手放せばいいと思ったから、伊東さんに付いていくことを選んだ。
自ら離れたくせに、いざ離れると皆との思い出が蘇ってきて二度と取り戻せない幸せな空間が酷く恋しくて寂しくて仕方なかった。