春〜4月〜

「いってきます。」

私の名前は木村まり

「・・・」

お母さんが私を見て目をそらした。

きっとこれは「いってらっしゃい」の意味

そうだよね、県立に落ちた人となんて喋りたくないよね。

ガチャン

私はドアを閉めた。

リビングを出て玄関まで行く。
目の前には買ったばかりの新品のローファーがある

今日から私は高校生。
お母さんは頭の一番いいA県立高校に通わせたかったが
その期待に応えられなかった私は
県内の私立へ通うことになった。
お父さんはとっくに死んだって言われ続けた。
お母さんは昼も夜もパートパート。
自分の言う事聞かない一人娘とは口も聞きたくないのか一ヶ月間喋ってもない。
入学式も来るはずがない。
だって二階には男がいるから。
昨日の夜連れてきたんだろう。
知らない男の靴の隣にある
私の新しいローファー。
ローファーを履いて玄関を開けた
そこには綺麗な青空が広がっていた。