ここは何処だ。彼女と喧嘩して、自分の部屋で寝ていたはず。

こんなところに見覚えはない。

いや、むしろ1番近くにある場所なのかもしれない。

一面に広がる闇。俺は今そこにいる。

“広がる”と言ってはみたものの、実際はわからない。
だって何も見えないんだから。
本当はものすごく小さな空間で、真っ暗なだけかもしれないんだから。
例えば目を覆い隠しているだけだったり。

何もわからなくても、ただ言えることがある。

五感を失っていること。
声を出しても体をつねっても舌を噛んでも、何も感じないんだ。 実際その行為をしたかすらもわからないが…。


そんな状況なのに、俺は至って冷静だ。

恐怖という感覚すらも失ったのだろうか。

俺は今、どんな態勢をしているんだろう。

やっぱり何もわからないんだ。

じわじわとひろがる開放感が、俺に快楽を与えるまで多分たいした時間はかかっていないだろう。
そう、時間の流れすらもわからないんだ。