その時、後ろから声をかけられた


「すいません、前通してもらっていいですか?」


あっ!私としたことが!!


こんな通路の真ん中で立ち話してたら邪魔じゃないの!!



「あっ、すいません……」


と振り返るとそこにいたのは


「あっ、テンちゃん……」
「あっ、祐介………」



私の元彼で一番長く付き合った櫻井祐介だった。


といっても、3ヶ月だけど。


婚約者がいて
その人に嫌がらせされて……
でも本当はそれだけじゃない。
やっぱり、心の底で愛せなかったから。
健夫みたいに心の底から愛が溢れてくる感情は起きなかったから。
そんないい加減な気持ちで、婚約者もいるような人と付き合いなんて出来なくて別れたの。
バージンはあげてしまったけどね。


「……天、誰??」
「テンちゃん、この男はなに?」


もう!そんな2人ともがっつかなくてもちゃんと答えるわよ!


「健夫…この人は、前に少しだけどお付き合いしてた人なの」

「祐介……この人は私の幼馴染で、今は付き合ってるの……私の好きな人です」


自分で言って恥ずかしくなって
キュッと目をつぶって、顔をパンパン叩いて、健夫、祐介、千里の順で見ていくと3人とも固まっていた。


「ん? どうしたの??みんな!
私、なんか恥ずかしい事言った??」


そしたら3人とも真っ赤になって赤面しだした


「ちょっと!天。それ反則よ!
私だってそんな素直でカワイイ天は貴重なのに!」


「えー?どうせ私は意地っ張りですよ!ふんっだ!
だって、健夫はきちんと言葉にしてくれるから、私だってきちんと向き合わないとダメじゃない!
いくらかわい気のない私だって、それくらいはするわよ!」



「天、お前はどうしてそんなにかわいいんだ」


と言ってギューッと抱き締めてくる健夫



「ちょっと、健夫!!ここ外!!
さすがに外ではやめてよね!
恥ずかしくて顔から火がでるわ!!」


「いやだ。」


「ちょっと、本当離れて!」


顔を手で押してグリグリして引き離そうとしても
お前はスッポンか!ってほどに離れない


「ぷっ(笑)ぐふふ!!
あんたたちサイコー!!あんたたち以上に美男美女で、お互いがお互いを知り尽くしてて、おバカなカップルはそうそういないわよ!!
ごめんね、祐介さん。
私はあなたの応援はしてあげられないです。天は生まれた時から健夫にずーっと執着されてるので、多分絶対に離れませんし、離さないと思います。
なので、、、すみません」


と千里が祐介に言った


私も、祐介がまだ自分に気があることはなんとなく気がついてる。
だからハッキリと健夫が好きだと意思表示した。


あとは祐介、早く私を忘れて。


「今日はテンちゃんの貴重な姿を見せてもらったよ?テンちゃんのことますます忘れられなくなっちゃったな。
まだ結婚したわけじゃないんだから
俺だってガンガンいくよ!
もうレイカ(婚約者)の事なんかどうだっていい。」


と爽やかイケメンスマイルで私を見た。


でもどんな爽やかイケメンスマイルでもやっぱ健夫にはかなわない!


あいつのスマイルはその比じゃないからね(笑)


小さな頃から毎日イケメン顔拝んでる私にとったら、イケメンビームは効かないも同然なの。


ごめんなさいね、祐介。


感情を出さない表情で見つめ返した。