心なしか弾む足取りで、私は乾君を連れて近くの洋食屋へと向かった。
昼時の慌しい店内に案内され、席に着く。
「梶原君とは、どう?」
出されたお冷に口をつけて訊ねると、乾君が表情も変えずに言った。
「仲良くしてもらってます」
その言葉に、思わず飲んだ水を噴出しそうになった。
乾君が無表情すぎてお世辞なのか本気なのかわからないけれど、あの梶原君と仲良くやっている図を想像したら、ありえなさ過ぎたんだ。
普通なら、どうしたら仲良くなれますか? なんてことを訊かれても不思議じゃないのに。
本当に仲良くしてるの?
嘘ついてない?
訊き返したくなったけれど、後輩だから気を遣っているのかもしれないと思いやめた。
「何かあったら、何でも言ってね。力になれること、あると思うから」
「ありがとうございます」
乾君は、表情を緩めて少しだけ口角を上げた。
「碓氷さんは、ずっと本社なんですか?」
「ううん。入社した当時は、何年か店舗に居たよ。これでも一応店長経験あるんだ」
自慢げに言ってみたけど、見えないでしょ。と自分でも笑いがこぼれてしまう。
すると、乾君は真顔で、ええ。なんて肯定する始末。
乾君という人物は、かなりの正直者かもしれない。
「河野さんは?」
「ああ、彼も一緒。初めは店舗にいたよ。面倒見もいいし、いい店長だったんだから。社長から気に入られちゃってね。大きな郊外店の方もどんどん任されて、出世街道まっしぐらよ。で、本社に来たのは、三年くらい前かな」
「結構、最近なんですね」
「河野も店舗の方が好きだったからね。本社勤務に何度も誘われてたけど、断っていたみたい」
「それが、どうして本社に来ることを決めたんですか?」
実は、そこのとろは私も未だによく知らないんだ。
どんな条件を飲んで本社にやってきたのか、未だに謎。
気がつけば、私が本社へ来た直ぐあとにはやってきてたっけ。